ニュースの概要
シグマが発表した新型ミラーレスカメラ「FP2」は、小さな箱形ボディで写真も動画も撮れるという初代fpの考え方を受け継ぎつつ、中身を大きく作り直した一台である。約2450万画素のフルサイズセンサーは部分積層型となり、データの読み出しが速くなった。その結果、動いている被写体を撮ったときの像のゆがみ(ローリングシャッター歪み)が抑えられる。被写体の自動認識は人物と犬、猫に加えて鳥にも広がり、ピント合わせの性能も上がった。動画面では、センサー全体を使う6Kオープンゲート記録やApple ProRes RAWに対応し、色を整える作業まで見据えた作りになっている。ASCIIの記事はこうした進化を、小型フルサイズ機としての新しい立ち位置とともに紹介している。
引用元: Sigma FP2、センサーと動画機能を大幅強化した小型フルサイズ機として登場(ASCII)
分析・見解
部分積層センサーで、小型機の弱点だった歪みに挑む
カメラのセンサーは、画面を上から下へ順に読み取る。読み取りが遅いと、速く動くものが斜めに傾いて写る。これがローリングシャッター歪みである。動画でカメラを素早く振ったときに、建物が揺れて見える現象も同じ原因だ。
FP2の部分積層型は、センサーの裏に高速の回路を重ねて、読み出しを速くする方式である。全面を積層する高級機より費用を抑えやすい。ニコンのZ6IIIが先に広げた考え方で、約2450万画素という画素数もほぼ同じ水準になった。画素数を欲張らず、速さに振ったところに意図が見える。歪みが小さければ、電子シャッターを使った無音撮影や高速連写の実用度が一気に上がる。
鳥まで広がる被写体認識が、スナップ機の顔を変える
初代fpは、止まっているものをじっくり撮るカメラという印象が強かった。ピント合わせは実用的だったが、動物や飛ぶ鳥を追う用途では、得意とは言いにくかった。
FP2は人物、犬、猫に鳥が加わった。散歩の途中で野鳥に出会ったとき、小さな本体のまま狙える意味は大きい。歪みの少ないセンサーと認識機能がそろうと、電子シャッターを安心して使える場面も増える。小型機でありながら、動くものを撮る選択肢が現実になる。
6Kオープンゲートと映像制作寄りの設計思想
オープンゲートとは、センサーの全面を使って動画を記録する方式である。横長、縦長、正方形のどれにも後から切り出せる。一本の素材を映画用、ショート動画用、広告用に使い分けたい制作者には便利だ。
Apple ProRes RAWは、色や明るさの情報を多く残す記録形式である(=撮影後に色を大きく動かしても画質が崩れにくい)。初代fpもRAW動画に力を入れていた。FP2はその路線をさらに進め、撮影から色調整までを一つの流れで考えた機種と言える。ただし6Kは記録量が大きい。撮影の自由度と引き換えに、保存と編集の負担が重くなる点は忘れたくない。
性能向上と引き換えに問われる、fpらしさの行方
ここで興味深いのは、競合との戦い方である。パナソニックS9やソニーのZV-E1も小型フルサイズ機だが、どちらも使いやすさを前面に出す。シグマは本体を素材のように扱い、ケージやモニター、外部記録機を足して仕上げる使い方を想定してきた。
性能が上がるほど、発熱、電池、記録メディアの負担も増える。小ささを保ったまま、この三つをどう収めるかが成否を分ける。ただし価格や発熱の実測値は、実機での検証を待つ必要がある。fpらしい自由さが薄れなければ、FP2は映像寄りの小型機で独自の席を確保するだろう。
ビジネスへの影響
映像制作の現場では、一本の素材で複数媒体に出せる
広告会社や制作会社にとって、6Kオープンゲートは作業の無駄を減らす手段になる。横向きのテレビ広告用と縦向きのSNS用を、別々に撮り直さずに済むからだ。撮影日数が一日減れば、人件費やスタジオ代の削減に直結する。小型の本体は、ドローンやジンバル(=手ぶれを抑える電動の持ち手)への搭載、車内など狭い場所での撮影にも向く。
一方で、機材一式を既存のシネマカメラから置き換えるのではなく、予備機や二台目として追加する形が現実的だろう。また、色調整まで社内で行う会社では、RAW素材の扱いに慣れた人材の有無が成果を左右する。
導入前に確認したい保存容量と周辺機器の費用
ProRes RAWや6K記録は、データ量が非常に大きい。高速な記録メディア、外部ストレージ、編集用パソコンの性能まで含めて予算を組む必要がある。本体価格だけで判断すると、総額で想定を超えることが多い。まずは一案件で試し、一時間あたりの容量と編集にかかる時間を測っておくとよい。
また、ProRes RAWを扱う編集環境が社内にあるかも確認したい。稟議の段階で、記録メディアや電源などの消耗品を初期費用に含めておくと、後からの追加申請を防げる。
写真中心の事業者は、鳥や動体の試し撮りから
写真館や自然系メディア、地域の観光PRを手がける事業者なら、鳥認識AFと歪みの少なさを現場で試す価値がある。軽い機材で長時間歩き回れることは、撮影者の負担を減らす。ただし連写性能や電池の持ちは、実際の運用で確かめるべき点である。貸出機やレンタルを使い、実務に近い条件で一週間ほど検証してから購入を決めたい。撮影案件の見積もりでは、機材の軽さを理由に撮影時間を延ばせる点も訴求材料になる。
